誤解から学ぶ緑内障

  誤解その2 「突然失明する」 ー中期末期症状に関してー

  1. まとめ

    「緑内障、即失明」というのが世間一般的なイメージかと思われます。診察の現場でも、家族友人と会話していても、そういった空気感はヒシヒシと伝わってきます。

    結論から言います。断言します。一般的な緑内障においては急に失明しません。諸説ありますが、失明に至るまでの年数は概して30年ぐらいと考えられます。

    なお、「30年」を経過した末期緑内障の見え方は、図1のような感じと想像されます。

    真ん中がはっきり見えているから大丈夫と思われるかもしれません。がしかし、この状態は想像以上に不自由です。手で小さな穴を作って覗き込んで見てください。この状態を疑似体験できます。何かは「見える」と思います。がしかし、何かを「探す」のは難渋になるかと思います。

  2. まとめ

    そもそも緑内障とは眼球のどの部位が障害される病気なのでしょうか。

    日本緑内障学会による緑内障の定義は以下の事です。

    「緑内障は,視神経と視野に特徴的変化を有し,通常,眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患である」

    つまり緑内障とは「視神経の病気」ということになります。では、視神経とはどこか。

    モノを見る仕組みについて簡単に解説させていただきます。

    光はまず入り口である「角膜」「水晶体」を通過して網膜に到達します。

  3. まとめ

    なお、網膜は10層あるのですが、最初に光を感じる部分「視細胞」は網膜の一番外側にあります。つまり、光は網膜の9層分を通過してから「視細胞」に到達します。光は視細胞でプラスとマイナスの電気信号に変換され、先ほど通過した網膜の層を逆行、一番内側にある「視神経」に送られます。

    この「視神経」が緑内障にて障害される部位です。

  4. まとめ

    さて「視神経」はその後、眼球の出口に向かって放射状に集結、一本の束になり、眼球から飛び出し脳へ向かいます。

  5. まとめ

    束は途中で二分、それぞれ「右脳」「左脳」に到達します。なお、眼球から脳の入り口までは、ダイレクトに繋がっています。

    解剖学的に「視神経」は脳の一部とも言えます。逆に脳の一部が眼球内に入り込んできたとも言えるのです。

    「視神経」と「脳」の関係は密接です。つまり緑内障は「脳の病気」「神経の病気」とも言えます。実際、緑内障になると脳にも障害が発症しているとの報告もあります。

  6. まとめ

    「神経の病気」の厄介な点は、「神経は再生しない」ということです。脊髄損傷後や脳梗塞後の機能障害は「神経が再生しない」ゆえに生じます。同じく「神経の病気」である緑内障も機能回復が見込まれません。緑内障における機能とは「モノを見る」こと。つまり、いずれは回復の見込まれない「失明」に至ってしまうのです。

    緑内障になるとやはり「即失明」ということなのでしょうか?もちろん、緑内障にも「段階」というものがあります。いきなり「末期」に到達するわけではありません。

    上記に挙げた脊髄損傷や脳梗塞は「急性」の病気であり、一般的な緑内障は基本「慢性」の病気です。ゆえに「即失明」には至りません。その進行は極めて「緩やか」です。イメージとしては同じく慢性の神経疾患である「アルツハイマー病」に近いかと思います。

  7. まとめ

    では「末期」に至るまでに何年かかるのか。

    緑内障の程度を「dB」という単位で表します。これは音の単位なのですが、電力、光の強さも表すことができます。緑内障の世界では「光に対する感度」の単位と考えてもらって良いかと思います。

    この「dB」を基準に緑内障の進行をシミュレートしてみます。正常は “0dB” 、末期は “-30dB” になります。では年間の進行速度は何dBでしょうか?

    これに関しては諸説ありますが、おおよそ-1dBと考えられています。となると「末期」に至るまで計算上は「30年」となります。もちろん個人差はありますから一概には言えません。

    ただ、30年かかるといっても、末期になると日常生活が非常に不自由になります。15年目の半分が障害される状態も、末期ほどではなくとも、日常生活にそれなりの影響が出ます。何度も言いますが緑内障は「神経の病気」であり、ここからの改善は見込まれません。

    生活の質を考えると、せめて-10dB以内には留めておきたいところです。となると、せめて-5dB前後、つまりは「初期緑内障」で発見、加療したいところです。ただし、この時点では自覚はありません。自覚がない状態では病院に行くキッカケに乏しく、発見出来ない可能性が高まります。

    発見のためにはキッカケが必要です。どうすれば「キッカケ」を産み出せるのでしょうか?次章以降で考えていきましょう。

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